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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2008-12-08 沼正三になれなかった航空幕僚長のお話

『家畜人ヤプー』という小説がございます。SF小説なのでございますが、SM、スカトロといった猟奇的な色彩が濃い問題小説でございまして、著者名は「沼正三」となっておりましたが、長らくその作者の正体は謎のままでございました。裁判所の判事説なども有りましたが、ある時期、天野哲夫という小説家がこの『家畜人ヤプー』の作者だと名乗り出ております。そして、この作者に関して諸説入り乱れたまま、その天野哲夫氏もさる11月30日に亡くなっております。

この小説がその奇異な内容にも関わらず60年代〜70年代という保守的な時代を生き残れたのは、作者不詳という独特な事情のもとに作品が一人歩きしていたからではないでしょうか。あるいは、作者不詳という形であったからこそ、かくも奇抜な内容の小説を発表できたのかもしれません。ある作品が生き残るかどうかには、その時代背景や作者の社会的立場なども密接に関係する場合がございます。

さて、田母神さんの懸賞応募論文が物議を醸し出しております。侵略戦争なんて世界中の先進国がやってきていることでございますから、日本だけ取りざたされるのは腑に落ちないというその気持、分からないでもないのでございます。また、自衛隊のイラク派兵のときなど、土壇場まで詳細が決まらず、そしてほとんど丸腰で送り込まれるといった、まるで旧世界大戦での特攻隊のような扱いを受けております。そういったこともございまして、命をかけている現場の人間といたしましては、「世間体ばかり気にせず、本音で話そうぜ」といった気持にもなるのでございましょう。

あのような問題論文は、いっそ作者不詳(覆面作者)として発表する方法もあったのではないでしょうかねぇ? そうして、ご自身の任期を全うされてから、「実はね...」と暴露するのもよろしかったかもね。航空幕僚長という立場の人間の文章でなかったら、あの論文はもっと違う形で世の中に出ていたかもしれないのでございます。右の意見も左の意見も、同じように扱われ、同じように議論される、そういった自由な議論というもの、もっとなされてもいいと思うのでございますけどねぇ。やはり、話題が話題だけに、タブー視せざるを得ないのでしょうかねぇ。


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