店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
新聞の広告で、「『メメント・モリ』が26年ぶりに刷新!」とあるのを見つけ、慌てて『メメント・モリ』を取り寄せたのでございます。『メメント・モリ』、ほとんどの方が何のことだか分からないですよね。『メメント・モリ』とは、藤原新也という写真家の写真集の題名でございます。ただ、この写真集には「死を想え」という副題がついております。そう、この写真集のテーマは、「死」なのでございます。
「死」がテーマではございますが、陰惨な写真ばかりが並んでいるわけではございません。“死を想う”ためには、“生”を見つけなければなりません。美しい花や大自然の写真なども、いっぱいいっぱい、ちりばめられている写真集でございます。この本が、ただの写真集でないのは、一枚一枚の写真に添えられた言葉にございます。たわいもない言葉もございますし、心にドスンと響く言葉もございます。ページをめくる度に飛び込んでくる珠玉の言葉と映像によって、読書は自らの生と死を見つめ直すことになるのでございます。
ワタクシがこの本に思い入れがあるのは、この本が大学の授業のテキストだったからでございます。ワタクシが通っていたのは仏教系の大学でございまして、一般教養には宗教学なんて授業もございました。そのときのテキストが、この写真集なのでございます。当時所有しておりました初版本は引っ越しの際に処分してしまったのでございますが、この本が多くの人に読みつがれ、初版から26年の歳月を経て刷新されたというのは、感慨深いのでございます。
(浜辺で死体が火葬される写真に添えて) ニンゲンの体の大部分を占める水は、水蒸気と なって空に立ち昇る。それは、雨の一部となって 誰かの肩に降りかかるかもしれない。何パーセン トかの脂肪は土にしたたり、焼け落ちた炭素は土 に栄養を与えて、マリーゴールドの花を咲かせ、 カリフラワーを育てるかもしれない。