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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2008-10-07 演じないことが演じること

『鬼畜』という映画を見たのは、ワタクシがまだ高校生の頃でございました。時代に取り残され、追い込まれ、葛藤する父親の役を、緒形拳がみごとに演じておりました。当時のワタクシにとってはそれほど馴染みのない役者のはずですけど、不思議な懐かしさを感じる役者さんでございました。

その映画の中で緒形拳は、石版印刷の職人を演じておりました。苦労して身につけた石版という技術がもはや時代遅れになり、現実に押しつぶされそうな圧迫感の中で鬼にかわり、自分の子供を一人ずつ捨てていくという役柄でございます。「鬼」と言いましても、秋葉原事件のような「殺人鬼」ではございません。心の奥底の罪悪感を黙殺し、良心の呵責と戦いながら必死に“鬼になろう”と葛藤する複雑な役どころでございます。

緒形拳全盛期の頃は、「緒形を使っておけば大丈夫」とばかりに、映画、ドラマ、何にでも緒形拳が出演しており、辟易(へきえき)したときもございました。しかし、どんな役も手を抜くことなく見事に演じきるその姿勢には感服でございます。特に晩年の演技は力が抜けていて、飲み込まれるような美しさや魅力がございました。

緒形拳さんの冥福を、お祈りいたします。


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