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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2020-03-25 【検査の信憑性を計算してみた!】

今日は数学のお話。数学アレルギーの方は、サラサラ~と読み飛ばして下さいませ。猛威を振るっているウィルスに対する「検査」の計算でございます。検査は多い方が良いのか少ない方が良いのか、数学的に検証するのでございます。

まず、今話題になっている「PCR検査」には「感度」「特異度」というものがございます。

感度:ウィルスが居た場合、それを正しく判定する割合
 (コロナの場合は70% 30%は偽陰性)
特異度:ウィルスがいなかった場合、それを正しく判定する割合
 (コロナの場合は99% 1%は擬陽性)

でございます。ウィルスを取り逃がす場合(偽陰性)と、ウィルスと見間違う場合(疑陽性)が有ると言うこと。これが大きく関わってきますので、この大前提をよ~く覚えておいて下さいませ。

では、ここから、計算をやり易くするために、日本人の人口を1億人といたします。そして、その中の1万人がウィルスに感染していると仮定いたします。お隣の韓国ではもはや9千人が感染してますので、まぁまぁ妥当な推測ではないかと思います。1億の人口の中に1万人の感染者(1万分の1)がいるという仮定、ここからスタートですよ。

第一の仮定:無作為に検査

人口1億の中から、無作為に10万人を検査すると仮定いたしましょう。感染率1万分の1の仮定ですから、10万人の中には10人の感染者がいるはずでございます。それをどれだけ正しく検査で見つけられるか? それを数学的に紐解いて行きますよ。

まず、ウィルスの有無・検査結果で、以下の4種類に分かれるのでございます。この時、先ほどの感度と特異度の割合によって、それぞれの人数が予測できます。この人数にご注目あれ。

検査数:10万人、そのうち感染者10人
1. ウィルス有り 検査+ (7人)
2. ウィルス有り 検査ー (3人)偽陰性
3. ウィルス無し 検査+ (1,000人)擬陽性
4. ウィルス無し 検査ー (98,990人)

1,000人もの擬陽性を出してしまうことに驚かれたでしょう。ここで、「検査で陽性」と言われた人が「本当にウィルスを持っている確率」を計算いたします。陽性と言われたのは、(1)と(3)。その中で本当にウィルスを持っているのは(1)だけ。7÷(7+1000)=0.00695 ということで約0.7%。

闇雲に全員検査をすると、「あなたは陽性です」と検査で言われた所で、本当に陽性である確率は0.7%。このやり方では、大量の擬陽性、つまり本当はウィルスを持っていないのに、検査で「持っている」と判定されてしまう人を大量に出してしまうからでございます。そこで、次の仮定。

第二の仮定:問診などで少し絞り込む

事前の問診などで検査を「少し怪しい人」に絞り込んでみましょう。絞り込んだ結果、検査対象は1万人に減り、その中に100人の感染者が居ると仮定いたします。絞り込みによって、感染率が百分の一まで上がっています。さぁ、この100人は、見つけられるのでしょうか?

検査数:1万人、そのうち感染者100人
1. ウィルス有り 検査+ (70人)
2. ウィルス有り 検査ー (30人)偽陰性
3. ウィルス無し 検査+ (99人)擬陽性
4. ウィルス無し 検査ー (9,801人)

さて、これでも99人の擬陽性を出してしまいますね。先ほどの様に「検査で陽性」と言われた人が「本当にウィルスを持っている確率」を計算いたしましょう。すると、まぁ、なんということでしょう! この検査の確かさは41%にまで跳ね上がります。ここまでやって、やっと検査らしくなってきましたよ!

第三の仮定:十分に絞り込んでから検査

問診だけでなく、CT検査なども駆使して、さらに絞り込んでみましょう。絞り込んだ結果、対象者は1,000人にまで減っています。そして絞り込んだ結果、感染率は10分の1まで上がっております。1,000人の中から100人の感染者を探す検査となりました。

検査数:1,000人、そのうち感染者100人
1. ウィルス有り 検査+ (70人)
2. ウィルス有り 検査ー (30人)偽陰性
3. ウィルス無し 検査+ (9人)擬陽性
4. ウィルス無し 検査ー (891人)

さぁ、ワクワクしながら、先ほどの「検査で陽性」と言われた人が「本当にウィルスを持っている確率」を計算いたしましょう。すると、88.6%! このくらい対象者を絞り込んで初めて、検査結果に信頼性のある数字が上がってまいりました。

コロナウィルスの検査では、感度が70%と低めですので、検査の度に大量の疑陽性を出してしまいます。このため、闇組に検査しても多くの疑陽性を生み出すだけで、検査結果の信憑性はどんどん下がっていく。医師の問診や検査などで検査対象を絞り込むことが、いかに重要かがお分かり頂けるかと思います。

この「事前に絞り込む」というの、「検査前確率を上げる」と言うそうで、お医者さんの中では常識となっているそうでございます。もちろん、大量に検査する方式を否定するわけではございません。その検査結果の信憑性を分かった上で対応が出来ればよろしいのですから。

「検査をしまくる」「絞り込んで検査する」、このどちらも正解だとは思っております。重要なのは、その検査結果の信憑性をよく理解し、それに合った対応が出来ればよろしいかと思います。数学アレルギーの方には、ちょっとむず痒い内容になっちゃいましたね。では、このへんで。


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