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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-12-15 【月野うさぎは覚醒してセーラームーンへ】

【覚醒】

1.目がさめること。目をさますこと
 2.迷いからさめること。迷いをさますこと


「覚醒」という語がございます。まぁ、「覚醒剤」なんて使われ方もいたしますが、本当は「目がさめる」「迷いがさめる」という意味でございます。長年、多くのニューハーフ・女装子さんを見ておりますと、時として、覚醒する瞬間に出会えることがございます。

このお仕事を始めた頃というのは、とにかくお客様に気に入られようと、手を変え品を変え、様々な手法を盛り込もうといたします。そして、より自分を磨き、よりハイレベルな接客を目指すものでございます。

最初の頃は、覚えることがいっぱい、クリアしなきゃいけない課題がいっぱい。でもね、そういう課題が有るうちの方が、人間幸せなのでございます。なぜなら、目標物が見えているからでございます。問題点をひと通りクリアして、さしあたっての目標が無くなった時、人というのは迷いが始まるのでございます。

ここに、人気商売の怖さが有るわけで、「今のままでいいのだろうか?」「他の人はもっとハイレベルなことをやっているのではないだろうか?」という疑心暗鬼に陥るのですよね。そして、より多くの要素を自分の接客に取り込んで、よりハイレベルの高みに登ろうとするのでございます。

もちろん、自分の接客を高める事は良いことなのですよ。ただね、一度お客様に提供したサービスを後から「今日は出来ない」なんて言うと、それこそ「サービスが悪くなった」と言われることになる。それがありますので、サービスを増やす方向へは動きやすいけれど、減らす方向ってのは動かない。逆転防止機能が付いた歯車の様なものでございます。

その結果、過剰サービスのスパイラル(悪循環)に陥ることもございます。この過剰サービスってのは、必ずしもお店の中のサービスだけには限らないのでございます。メールやLINEの返事、時としてお店の外でのお付き合いなども有ったりいたします。先述したように、一度始めたものを「止める」というのは怖い。悪循環の渦が大きくなるにつれて、疲れてくるのでございます。

こういった過程は、高みを目指すコンパニオンの多くが陥る穴でございます。ネットが発達した昨今では、昔以上にコンパニオンの負担は大きく、悪循環に陥る可能性も高いのでございます。ここでね、その悪循環から抜け出す希有なコンパニオンに時々出会うことがございます。それが、「覚醒」なのでございます。

悪循環に至るまでの過程というのは、「足し算」の接客でございます。あれもこれも詰め込みたいと思うあまり、自分の接客がいっぱいいっぱいになってしまうのですよね。さて、「覚醒」とは、「引き算」の接客でございます。接客というもののエッセンスが見えてくる。すると、いらないものも見えてくる。いらないものを捨て始めるのでございます。

以前は、「これやらないと嫌われるのではないか」と思っていたことも、あっさり捨てられるようになる。それを支えるのは、「自分への自信」でございますね。接客というもの、ポイントさえ押さえていれば、それほど多くのお品書きを用意する必要は無かったりするのでございます。要は、その見極めと、実績に支えられる自信。自分を信じる心でございます。

ここで注意しなければいけないのは、この「引き算の接客」は、「足し算の接客」を極めたものしか到達できないということでございます。最初から引き算を始める人は、それは「ただの手抜き」でございます。「型破り」ってのは「型を極めた人があえて型を破ること」というのと通ずるのでございます。

ワタクシ、以前より、「プロフェッショナルとは、7~8割の力量しか出さず、むしろ安定感を重視すること」と述べてきております。どんな世界でも、その道を究めた職人さんっていうのは、あまり力を入れていないように見える。それでいて、ポイントは押さえている。あのイチロー選手が軽々とヒットを打ち続けていたようなものでしょうか。

「覚醒」ってのは、若い頃には難しいかもね。若い頃は、何でも力技で解決できちゃいますから。むしろ、力が無くなった時に到達することなのでしょう。そう考えると、年を取るってのもそうまんざらでもないのでございます。では、では。


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