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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2018-06-17 【異常なんじゃなくて病気なんです、治るんです】

ある病気での、医者と患者の最初の問診のやり取りから。


医者:(患者に向かって)「自分の思い通りに腕を動かすことが出来ますか?」
患者:(手をバタバタ動かしながら)「こうですか? はい、出来ますよ」
医者:「では、それと同じように、心臓を止めてみて下さい」
患者:「(え? 何言ってるの? この人!)...」
医者:「無理ですよね」
患者:「無理に決まってるでしょ!」
医者:「でも、心臓も胃腸も何も意識してないのに、ちゃんと動いてくれますよね。そうした、生命維持を24時間休みなくコントロールしているのが、自律神経なのです」

これはですねぇ、「自律神経失調症」の患者さんに対して、まず「自律神経」を説明するときの会話でございます。このやり取りの意図は、自律神経が自分の意思ではコントロール出来ないものであることを、患者さんにはっきり自覚させることでございます。そして、自律神経が乱れるとどんな症状が出るのか? という説明に進んで行くわけでございますね。

どうしてこのやり取りが必要なのか? それは、自律神経失調症の症状に原因がございます。「だるい・ストレス・不眠・不安・緊張・イライラ...」といった症状があるのですが、この病気の人は「まさが病気のせい」だとは思わないので、「自分が悪い」「自分の努力が足りない」と自分を責めてしまうのですよね。その思い込みを断ち切るための、この問診でのやり取りなのでございます。

普通、「病気」と「性格」は別物だと思われております。しかし、「性格を変えてしまう病気」というのは多く存在するのでございます。自律神経失調症もそのひとつ。うつ病とか依存症といった心の病気もございます。また、発達障害・統合失調症といった先天性のものも有れば、寄生虫、虫歯なんてものが原因だったりもする。原因は多くあるのに、症状は非常に似ていて診断が下しにくい。ここに、この手の病気の難しさがございます。

「性格」と「病気」は、卵が先かニワトリが先かといった論争に似てまして、「病気のせいで性格が変わった」という考え方も有れば、「この性格だから病気になった」という考え方も出来るのでございます。そして、悲しいかな、圧倒的に、後者の考え方をする人が多いのが、こういった病気の不幸の始まりなのでございます。

「性格を変えてしまう病気」のほとんどは、「治療」が可能でございます。たとえ完治できなくとも、薬で症状を抑えておくことは出来るのでございます。ところがですよ、多くの人が、「自分が悪い」「努力が足りない」と自分を責め、ますます泥沼にはまって行ってしまう。そこで、冒頭の「自覚」が必要なのですよね。「自分のせいではない、病気のせいなのだ」と思うことから、スタートするのでございます。

今日、どうしてこんな話をしたのか? 先日、新幹線の中で無差別に切りつけるという事件がございましたよね。新聞報道を読んでおりますと、その犯人、幼少期から「拘りが強く、融通が利かない子だった」とございます。そのせいで家族とのトラブルが多く、親族や施設をたらい回しにされたあげくの犯行なのでございます。

「拘り」「融通が利かない」というのを読んで、この犯人、何らかの発達障害か精神疾患を持っていたと想像されるのでございます。実際、家族も措置入院をさせようとしておりますが、不幸にも「必要なし」との判断が下されてしまう。あの事件が起きるのは、その直後のことでございます。

子供の頃は、「自分のせい」「自分の努力が足りないせい」と思っていたかも知れません。努力が報われないままトラブルだけが度重なると、「家族のせい」「他人のせい」「世の中のせい」と思い始めるようになる。この時に、「病気のせいかも」という考え方が本人に少しでも芽生えていたら、本人の人生も、そして被害者の方の人生も、全然別のものになっていたはずでございます。

この犯人が子供の頃、誰かが「君は本当は良い子なんだよ。うまく行かないのは病気のせいなんだよ」と語りかけていたら、彼のその後の人生は変わっていたのかも。いや、成人してからでも遅くない。本人が「病気なんだ、治療できる」という自覚を身につけ、その様に行動していたら...たらればを言ってもしょうがないですね。

この犯人の動機が、悲しすぎる。被害に遭われた方も、悲しすぎる。こんな悲しい事件が、少しでも減りますように、願っております。


参考

『まんがでわかる自律神経の整え方』
 著:小林弘幸 絵:一色美穂
 発行:株式会社イースト・プレス
 158頁 ¥1,000+税

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