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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2016-08-24 【お金で釣るか、情に訴えかけるか、それが問題だ】

ちょいと興味深い記事を見つけたのでございます。コメダ珈琲と言えば、名古屋発祥(笑)。このコメダでバイトの罰金が問題になったとのこと。詳細は分かりませんが、何でも、オーダーミスをするとバイトの買い取りになったり、欠勤で罰金を取っていたり。そういった事が労働基準法に違反するのではないかと、記事になっておりました。

一方、当店はと言いますと、今は、罰金を全廃しております。「今は」とただし書きが付くということは、昔は罰金を取っておりました。それも、ちょっと高額な罰金を。かつては、風俗や水商売では、罰金は当たり前の時代がございました。人気商売であり、どちらかというと、芸能関係の仕事に近い雰囲気が有ったからでございます。

罰金を取るということは、「罰金を払いたくないからルールを守る」という心理が働きます。それが、罰金の効果でございますね。これを経済学では「市場規範」と申します。お金で釣って誘導するわけでございますね。これとは別に、罰金を設けず「本人の自意識や道徳心に因ってルールを守らせる」という方法もございます。こちらは「社会規範」と申します。

商売において、市場規範を用いるか、社会規範を用いるか、これは非常に重要な選択肢になるのでございます。大規模の組織であったり、様々な価値観の人が混在していますと、社会規範を適用せざるを得ない場合が多いのでございます。昔の当店がそれでございました。各コンパニオンの競争が激しい中、どこかで線引きをして統制を取ろうとすると、社会規範を適用して罰金で縛るということになっていたのでございます。

そして時は流れ、コンパニオンの意識も変わってまいります。かつて血眼になって競争していたコンパニオンは今やベテランとなり、マイペースでお仕事をしております。また、入ってくる若手の新人さんも、最近は「収入よりも自分のプライベートを大事にしたい」という人が増えております。こういった意識の変化により、もはや「罰金で誘導する」というのは、不毛になっているのでございます。

そこで、ジャジャジャ〜ン、「社会規範」の登場でございます。罰金を全廃し、本人の自覚のみでルールを守っていただくという形に変わっております。実は、市場規範と社会規範を比べますと、社会規範、つまり罰金がない方がメンバーの志気が高まるというのは、経済学でも証明されております。メンバー同士の意志の疎通が十分に出来ていれば、商売的には社会規範の方が能率的なのでございます。

かつて風俗店では、高額な罰金が当たり前でございました。ワタクシが現役の頃は、急病などで1日休むと1〜2万円という罰金が普通でした。「罰金は高いけど、出勤したときにたくさん稼いでね」というスタンスだったのでございます。ところが、今やほとんどの風俗店では、「罰金・ノルマなし」というのを募集の謳い文句として掲げております。やはり、風俗嬢の意識が大きく変わってきたというのが、その要因でございましょうね。

さて、お話をコメダさんに戻しますと、コメダさんのやり方も、まぁ、理解は出来る。きちんとしたバイトさんが多い中、中には、ホント、いい加減な人もまれに混じっていたりする。口で言っても効果がない場合、どこかで罰金で縛ることが必要になってくるというのは、人を使っていると分かることでございます。だから、あまりコメダさんを責められない。

ただ、社会規範を適用できるのに、経営者側の努力不足から市場規範を適用しているとしたら、それは経営者の怠慢。単に、昔からの因襲として罰金が残っているのでは、という想像も出来るのでございます。結局、従業員を信じるか信じられないかというところに帰着していくのですが、商売的にはどちらの両極端にも偏れない。ですので、そのバランス感覚に、経営者の手腕が試されるのでございますね。

こういった、市場規範、社会規範というのを、会社を経営する側の人間は、必ず考えております。時として、仕方なく市場規範を適用する場合もございます。しかし、全体像を見ずに一部を取り上げて「ブラック」と呼ばれてしまう企業もあったりいたしますよね。お店を背負っている人間といたしましては、心苦しい例もあったりいたします。まぁ、コメダがどうなのかということは、詳細が分かりませんので、何とも言えませんけどね。

一般企業でも、「収入はほどほどでいいから、お休みが欲しい」という新入社員が増えていると聞いております。世の中、ますます市場規範でコントロールするのは難しくなっているようでございますね。かといって、社会規範にはまたそれなりの難しさがございます。人を使う立場の方々、難しい時代に入っているのではないでしょうかねぇ。お察しいたします。では、では。


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