店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです
ワタクシがまだニューハーフなりたての頃にも、ワタクシを100%騙しきった男性がおりました。よほどワタクシのことを気に入ったのでございましょう、ニューハーフになって最初に勤めたお店に、その男性は、足繁く通ってまいりました。ワタクシがそのお店を退店し、しばらくおつきあいした後、一緒に暮らすことになりました。それほどの間柄になっても、ワタクシは彼の職業が全く分からなかったのでございます。お仕事を聞いても夢物語のような話が返ってくるばかり。ワタクシも触れてはいけないのだなと悟り、あえて問いただすこともいたしませんでした。
その謎が氷解する日は、突然やってまいりました。彼が逮捕されたのでございます。何やら大変な悪事をしていたようでございます。当然のように、一緒に暮らしていたワタクシのお部屋にも、家宅捜索が入ったのでございます。自分の部家に家宅捜索が入ればさぞ慌てそうなものでございますが、その捜索の最中、ワタクシは担当の刑事さんとちゃぶ台を挟んで、気楽に世間話をしておりました。ワタクシの部家から証拠になるようなものは”絶対に”出てこないと、確信出来たからでございます。
彼は、自分の”仕事”がワタクシに悟られないように、細心の注意をはらっておりました。と同時に、仕事のヒントになるようなものも、一切お部屋に持って帰りませんでした。そしてお酒を飲めばいつも同じ口癖、「世の中には建設型の人間と、破壊型の人間がいるんだよ。俺は、破壊型なんだよな」...彼は自分が近い将来に逮捕されるというのを自覚しつつ、その限られた時間をワタクシと精一杯過ごし、そして自分がいなくなった後にワタクシに累が及ばないよう気遣っていたのでございましょう。ワタクシを100%騙しきること、それが彼なりのワタクシへの愛情。そんな愛情表現もあるのでございます。