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薫さんのひとりごと

店主、名古屋薫が、お店に関係あることや、お店に関係ないこととか、
いろいろ書いたりするかもです

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2009-06-02 ♪人の〜やらない、ことを〜やれ〜

CBC(中部日本放送)の深夜番組で『スジナシ』という番組がございます。中部地区では有名な番組なのですが、簡単に説明すると、笑福亭鶴瓶さんとゲストのタレントが、即興で芝居をするという番組でございます。毎回違うセットが組まれ、打ち合わせもせず立ち位置だけ決めていきなりスタート。お互いに相手の出方を探りながら芝居をいたしますので、ときとしてチグハグだったり予期せぬハプニングが起きたりと、結構楽しめる良番組でございます。

本日の放送は「宅間孝行」さんがゲスト。なんか脚本家だということですが、ワタクシは全然知らなかった人。だけど、この人が上手い。何だかんだで、上手にまとめ上げてしまう。あと、ちょっと前に出演した「劇団ひとり」さんも、“無理を通せば道理引っ込む”的な感はありましたけど、まぁまぁ上手にこなしておりました。

あと、お笑い芸人さんで上手な方がいるかと思えば、キャリアの長い俳優さんがメロメロのドロドロに舞台の上で溶けてしまうこともございます。どうも、脚本を書いている人や、常にアドリブを要求されるお笑い芸人さんのような方が、このような即興劇には強いようでございます。仕事柄、ストーリーの引き出しが頭の中にいっぱい用意されていたり、自分の置かれている状況を客観的に判断する能力が要求されたりするからでございましょう。

さて、ワタクシも若い頃、俳優の学校に通って演技などを勉強していた時期がございました。ワタクシはある演技指導の先生に、「君は演出家としての目を持っている」と言われたことがございました。その先生が言うには、ワタクシは演技をしている時、その自分の姿をまるで客席から見るように客観的に把握することが出来るそうでございます。と同時に、どんな舞台装置が向いているか、照明はどのように当てるべきか、そのような総合的な情景を、演技をしながら瞬時に想起している、ということだそうでございます。

まぁ、手前味噌になっちゃいましたね。本当に才能があれば、今頃役者をやっていたでしょうからね。ただ、自分を客観的に見るという能力は、客商売の今、非常に有効に働いております。“ひとりよがり”の接客というものは、ときとして失敗することがあったりいたします。自分の接客が本当に成功しているかどうか、それをもう一人の自分がチェックしているような「客観的な目」がないと、接客業は難しかったりいたします。

この自分を客観視する能力ってのは、生まれ持った気質に大きく影響されるようでございます。ということで、生まれつき客商売に向いている人と向いていない人が歴然と存在しちゃったりするわけでございます。まぁ、向いてない人も「学習」することで改善できますからね。どうか心配しないで。ただ、この「客観視と接客のメカニズム」を理解していないと、何を学習すればいいのかが分からない。すると学習させる際の手間暇を低減させるため、多くのサービス業はこの接客部分を「マニュアル化」することになるのでございます。

つまり、生まれつき接客に向いている人もそうでない人にも同じような接客レベルを会得させようとすると、決まり切った接客ルーチンをマニュアル化して教えるということになるのでございます。ファーストフードなど、多くのサービス業が紋切り型の接客しているのは、このマニュアル化によってコストの削減を実現しているのでございます。アルバイトなどは人の入れ替わりが激しいでしょうから、このマニュアル化は致し方ないところでございましょうか。

接客のマニュアル化でコストが削減でき、結果的に商品が安くなるというのは「経済」であり、経済というのはある種の「文明」でございます。一方、人と人との交わりというものには「文化」がございます。文明が文化を駆逐するなんて言いますが、その一端がサービス業の接客のマニュアル化に現れているのでございましょうか。逆に、あえて世の中の流れに逆らって、「マニュアル化から脱却する」という姿勢の企業が出てきたら、この企業のお店は流行るかも。他のやらないことをやるのも、商売の大きなツボのひとつだったりするのですよね。


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